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夜明け前 第3章 13
 利昭の家

 ガチャ・・・・バタン


久「お帰り。遅かったのね」

利「久実・・・起きてたんか」

久「いけない?」

利「いや。珍しいからな。お前が起きて待っているなんて」

久「たまにはいいでしょ?」

利「一体どうしたんだ?こないだからおかしいよ」

久「そうかしら。今まで貴方の事ほうっておいたから」

利「俺はその方が楽だけどな」

久「そう・・・・でもそれじゃいけないって思ったの。」

利「今更か?」

久「遅いとは思う・・・やり直すことはできると思うの」

利「なぁ・・久実。誰に何を言われたか判らないが、俺はもう嫌なんだ。お前より大事な人が出来た。本気なんだ。例えお前に子供が出来ていても俺はお前と離婚したい」

久「いやよ。私は離婚なんかしない。貴方しかいないの。貴方が本気でも私はいやよ。」

利「久実。判ってくれ。もう俺はお前を愛してはいない。必要だと思わない」

久「和田由紀奈っていう女ね?貴方をそこまで本気にしたのは」

利「どうして、それを」

久「同じ課の子から聞いたのよ。私の友達なの。最近よく一緒にいるって、その前からかしらね?」

利「そうか。だったら話が早いな。お前のそういう所が我慢出来ないんだ。」

久「だから浮気をするの?」

利「そうだな。スパイみたいなマネをさせて自分は悲劇のヒロインぶる。前もそうだった・・今回は本気だ」

久「貴方が私だけを見てくれないから。」

利「結婚当初から『子供はいらない。避妊して欲しい』って言ったのは久実。お前だ」

久「そうだけど、だって仕事が軌道に乗り始めたのよ?そんな時に子供なんて」

 
 久実は自分で会社を持っていた。
 
 利昭と結婚した時にはなんとかやっていける所だった。

 今は安定していて、業績も良かった。

 スタッフにも恵まれここまで来たのだった。


利「スタッフの子が結婚、出産の時は休ませて、自分は欲しくない」

久「私は社長よ、社長が休んで会社は回らないわ。それぐらい貴方だって判るじゃない」

利「立派なご意見だ。仕事を家までに持ってきてよく言えるもんだ。妻らしい事は一切しないでな。仕事をするなとは言わない。家は俺にとって癒しの所だった。」

久「直すわ。子供が出来たら辞めて他の人に社長を任せて、貴方の傍にいるから」

利「もう遅いんだ。久実。判ってくれ。」

久「いやよ。」

利「久実・・・・・泣いても駄目だからな。俺の意思は変わらないから」


 バタン・・・・・・



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